漁師が船を出して牡蠣の収穫に行くのは朝4時頃。牡蠣が付いたロープを上げながら、ボール状に固まった牡蠣を機械でバラバラにしてカゴに入れていきます。浜によって開始時間は少し前後しますが、通常は、朝の6時か7時から共同牡蠣処理場にて「牡蠣むき」が始まります。漁師たちは大体一週間くらいのスパンで天気の流れを読み、14時間以上の牡蠣の洗浄時間を逆算し、牡蠣を殻から出してむき身にする「むき子さん」に時間いっぱいむいてもらえるように、水揚げに行っているのです。
そして、漁師やむき子さんたちによって、綺麗にむかれた牡蠣は、汚れや不純物を落としてくれる流れるプールのような装置で洗浄されます。いくつもの小さな敷居が付いているので、汚れはそれぞれ区切られた部屋の下のほうに溜まり、牡蠣は水で洗われながら敷居の上を浮いて通ることで、身だけが綺麗になるように考えられた、これまた大変画期的な洗浄装置です。漁協に卸す場合、洗浄された牡蠣は、10kgごとの単位で専用の容器に入れられます。
毎日決まった時間に、トラックが石巻中の各浜を回り(女川や南三陸からも)、各生産者の牡蠣を乗せて、漁協石巻総合支所の競り場まで走ります。
各地から集まった牡蠣は、地区ごと、生産者ごとにラベルが貼られて並べられ、バイヤーさんたちに競り降ろされるのを待ちます。
漁協の職員は、この共販所に到着するまで牡蠣の温度管理がきちんとなされていたかのチェックをしたり、申告通りの容器の個数が各生産者から到着しているかの確認をして回ります。
バイヤーさんたちは、牡蠣をチェックしながらメモを取り、施設内の別の部屋へ移動して、それぞれ入札したい牡蠣とその価格を申告します。
最近では入札作業にタブレット端末が導入されており、スピーディーで効率的な業務革新が石巻にも起きています。こうして、買い手がついた牡蠣たちは、建物の搬出口の前に停められたトラックなどに次々と積み込まれ、全国のスーパーに並んだり、加工品へと生まれ変わって商品化されるんですね。
もちろん漁協の共販制度だけでなく、生産者が加工業者やレストラン等と直接取り引きしている場合もあります。カキの環も共販制度を通さない、流通経路の一つです。共販制度は、「生産者に価格決定権がない」「品質での差別化が困難なため、こだわって作っている人の商品も平均的な価格に落ちる」等の理由で批判があることも事実です。
しかしながら、共販制度がなかったとしたら、先の震災の大被害からの復旧に加えて、家族単位で漁業を営む漁師たち生産者が「販路確保」の仕事まで担わなければならなかったことになります。その場合は、きっと今のようなスピード感では事業を再開できなかったことでしょう。共販はなくてはならない制度だったと思いますが、それぞれ漁師の家のペースでさらに独自の販路を拡大できると、なお素晴らしいことです。
そしてこのカキの環のメンバー制度も、市場の価格に左右されない、生産者と消費者を繋ぐ、1つのソリューションとして漁村に存在し続けられると嬉しいです。